金津創作の森では、「森はあらゆる芸術の源である」という基本信念のもと、当館の特色である自然環境を舞台に、現代作家を招待し、現地制作の公開と展示という手法による「アートドキュメントシリーズ」を開催してきました。「現地で手に入る材料を使用すること」を条件に制作を依頼し、作家は2週間から1ヶ月の間、森に滞在しながら作品をつくり、その制作風景は一般に公開しています。
作家の滞在は、地域の人々との交流を生み出し、アートやモノづくりについて考える機会となっており、また、一刻一刻と変化する自然の中での鑑賞体験は、五感を刺激し、人間が本来持っている原初的な感覚や身体性を思い起こす機会となっています。
今回は、10回目の区切りを迎える前年として、シリーズ企画を見直す意味でも、実験的な試みとして異色のクリエイティブユニット「graf」を招待します。grafは、家具や照明、空間デザイン、グラフィック、映像から食に至るまで、具体的なモノの制作をする一方で、根本となる「暮らしの構造」に着目し、モノづくりやアイディアが生まれる環境や空間を提案しています。
本企画では、金津創作の森を、モノづくりの「場」として位置づけ、多彩なワークショッププログラムで日々を構成し、参加・体験型の展覧会として開催します。これまでのドキュメントシリーズの公開制作部分が拡張したような、会期を通じて人と物事が変化、進行する臨場感ある企画となるでしょう。