2020(令和2)年度、日本を代表する写真家・
奈良原は、戦後日本の写真界を牽引した写真家であり、国内外から高い評価を受けています。1956年、早稲田大学大学院在学中に初個展「人間の土地」で鮮烈なデビューを飾り、写真界を震撼させるほどの大きな反響を巻き起こし、写真の新時代を切り拓いていきました。1958年には「王国」で日本写真批評家協会新人賞を受賞。その後、ヨーロッパ、アメリカへと活動の場を広げ、写真集『ヨーロッパ・静止した時間』、『消滅した時間』、『ヴェネツィアの夜』などに纏められる珠玉の作品群を発表していきます。今回の受贈はこれらの代表作を網羅した作品群です。自ら身を置く「場」を移しながら、時空を超えてそこに生きる人間の生と死を、また人間の創り出す文明の光景を、巨視的な視座で捉え、深い思索と詩情豊かな映像を生み出していきました。
本展では、代表的なシリーズから約80点に加え、1986年の個展以来未公開となっていたシリーズ《デジタル・シティ ヒューストン》 を40年ぶりに展観する機会となりました。奈良原の透徹したまなざしが生み出す魅惑的な世界を、ぜひこの機会にご堪能ください。
1931(昭和6)年~2020(令和2)年
福岡県に生まれる。1956年、初個展「人間の土地」により、戦後日本の写真表現を塗り替えるほどの衝撃を与えた。この個展を契機として新鋭の写真家たちが集い、写真のセルフ・エージェンシィ「VIVO」を結成していく。第2回個展「王国」で日本写真家協会新人賞を受賞。その後、ヨーロッパ、アメリカと自らの身を置く場を移しながら、写真集『ヨーロッパ・静止した時間』、『消滅した時間』など、人間の創り上げた文明の光景を映し出す、珠玉の作品群を生み出していった。日本を代表する写真家であるとともに、国際的にも高い評価を受けている。
西洋近代美術史および写真史を研究。奈良原一高の研究・展覧会企画に長年携わってきた第一人者が、奈良原一高の写真の魅力を解説します。
※要展覧会観覧券
■蔦谷 典子(Noriko Tsutatani)
前・島根県立美術館学芸課長。西洋近代美術史、写真史。
1990年より米子市美術館学芸員。「植田正治とその仲間たち」(1992)など企画・開催。1995年より島根県立美術館学芸員。開館記念展「水の物語―ヨーロッパ絵画にみる神話と象徴」(1999)、10周年記念展「フランス絵画の19世紀」(2009)、15周年記念展「水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界」(2014)などを担当し、2015年西洋美術振興財団学術賞を受賞。また、「写真の歴史160年」(2001)、「光の狩人 森山大道」(2003)、「手のなかの空 奈良原一高」(2010)、「愛しきものへ 塩谷定好」(2017)、「森山大道 光の記憶」(2023)などを企画・開催。2014年、日本写真協会学芸賞を受賞。2025年3月、退職。著書:『夢の翳 塩谷定好』(求龍堂、2019)、『森山大道 光の記憶』(求龍堂、2023)、共編:『太陽の肖像 奈良原一高・文集』(白水社、2016)ほか。